第6話 『 ホコ と タテ 』

 波も無かったが、インサイドのショボショボでサーフィンの初心者スクールを行った。
 今日の彼は、見た目のイメージ(私の勝手な)とは裏腹に、意外とスジが良く、何度かタイミングやコツを教えただけで、スイスイと自分で波に乗っていた。まだまだ立てる訳ではないが、きちんと波に押されていたし、オカでは味わえない、不思議な波のエネルギーを感じていた様子だったので、教えてるこちらも嬉しかった。

 しかしこのスクール、「一人でも多くの人に、サーフィンの素晴らしさを伝える!」といえば、崇高な志を抱くサーフィン伝道師のようで聞こえはいいが、実際のところ、「ほーら、サーフィンって楽しいでしょ。帰ったらウチの店でサーフボード買ってね!」という、商売上の営業くささは、悲しいかな拭い去れない。
 まっとうなサーファーであれば、波乗りに求める究極のひとつに、「仲の良い友人たちだけで、良い波に乗りたい!」というのがあるのではないでしょうか?もちろん私も同じように思っているのですが、やみくもにサーファーを増やしかねない私のしてる事は、全くもって、言ってることとやってることが矛盾しています。

 現在のサーフィンインダストリーに関わる人たちの中で、どれだけの人がこの矛盾を感じているかは、私の知る所ではありません。しかし、サーフショップのオヤジという商売を続けていくかぎりは、これからもこの矛盾の中で、多少はもがき苦しむことでしょうが、波乗りも商売もアウトサイドのピークを目指して頑張っていきたいと思います。

2003年6月3日 SS