第11話 『 コントラスト 』
 

上の写真は今朝の海。写っているのは、サイズもブレイクも40点くらいの波、冬でも真面目なサーファー君、そして、漁師の持ち物にしては、いささか立派過ぎる船、である。

 朝一でチェックしたホームでは、ウネリがショボすぎて波乗り出来そうになかった。いつもなら、「ウチに帰ってメシにしますか?」となるのだが、「真冬だけどこんなに天気もいいし、ちょっと遠出でもしちゃおっか。」と思い直して、滅多に行かない写真のブレイクまで来ちゃった、という次第。

 平日の朝のせいか、アウトには誰もいない。何度かダックダイブを繰り返し、ピークで波待ちしていると、漁船だと思っていた沖にある白い船が、異様にデカイことに気が付いた。
 しばらく波乗りしていると、ローカルであろうサーファーが何人か入ってきたので、お約束のサーファーっぽい挨拶を一言二言交わしてから、その中の一人に聞いてみた。「あの船、何すか?」

 まるで、カラスって何色?という質問に答えるが如く、その彼は当たり前に答えた。「原発がテロに狙われないように見張ってんすよ。」
 確かに、このブレイクのすぐとなりには、日本有数の高出力を誇る原子力発電所があるし、こんな物騒なご時世だから万が一のこともあるだろう、という理由で、こうやって監視してるのだと言う。

 ふーん、たかだか40kmしか離れてない場所で、こんなシリアスな現実があったんだなぁと、少しビビリながらも、いつ何時飛んでくるか分からないミサイルにドキドキしている者と、次こそは最高の波乗りしてやるゼ!とワクワクしながら波を待ってる者、同じように海に浮かんでる巡視船とサーファーではあるが、その目的を比べてみるとかなり可笑しかった。(不謹慎ですみません)

海から上がって双眼鏡で覗いてみると、真っ白い船体に ”JAPAN COAST GUARD”と書いてあるのが見えた。やっぱりとは思ったが、間違っても " INDIES TRADER "とは書いてなかった。そうだったらもう少し夢があったのに。                         
                                                                    

2003年2月13日 SS